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2003/07/19

草の花

福永武彦 著
新潮文庫

小説の構成が巧みだ。
汐見と千枝子のそれぞれの考えの両方がとても重く感じられる。それはきっと汐見のノオトと千枝子の主人公への手紙の両方を読者が読むという形式にしているからだろう。
戦争への恐怖と宗教(キリスト教)と孤独。
汐見は孤独のなかに答えを見つけようとしている。
人間の苦悩を神と関連づけるより、己のなかで模索するほうが、当時の日本においては納得できる唯一の方法だったかもしれない。神がいるなら、なぜ戦争が起こるのか。なぜ人と人が殺しあわなければならないのか。
その答えは今の時代にも見つけることはできない。
汐見と千枝子の考え方の違いを小説のなかに見つけることができる。千枝子が「信仰の悦びは自分だけがそれに与っているのは惜しいような、そんな種類のもの」と言っているのに対し、汐見は「真に謙虚な人間が、ただつつましく聖書を読み、神を信じて、その信仰をただ彼の心の中にだけそっと保つこともある」と言っている。
この小説にはもうひとつテーマ(同性への憧憬とでも言おうか)があるのだが、そのことについてはここで言及するのは難しい。ただ、とても美しく表現しているし、難しいテーマをうまく読者に伝えていると思った。


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