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2004/07/12

コイン・トス

幸田真音 著
講談社

9・11をテーマにした小説。
あれから3年の月日が流れてしまった今、この小説を読んであの日が甦る。
あの出来事はWTCに何らかの形で関わっていた人、ニューヨークを訪れたことのある人ほど記憶に深く刻まれているのではないだろうか。もちろん、そうでない人にとっても同じ時代を生きた世界中の人が忘れられない出来事として記憶に留めていることは言うまでもない。
著者はかつてディーラーとして米国系金融業に就いていた経験から、WTCとも深い関わりを持っていた一人で、多くの友人、かつての同僚をあのテロでなくしたことでしばらく書けなくなってしまったということである。しかし、あえてそのことをテーマに小説を書くことで乗り越えようとしている。
この小説を読んで「グラウンド・ゼロ」は「爆心地」という意味を持つことを初めて知った。攻撃の対象になったのはWTCであったけれど、日々平穏を感じて暮らしている多くの人々に衝撃を与えたという意味で、確かにあの場所は爆心地である。
物語を読み進めるにつれ、私にこれだけの感情や思いがあるように、あのテロの犠牲になった人々にもそれぞれの人生があったことを思い、胸が締め付けられてしまうが、それでも生き残った私たちは前進しなければならない。そして、小説の最後、まさか、という結末に「奇跡」があることを思わずにはいられない。

小説の中で主人公が恋人を探して訪れる7番街の病院の前を、私はテロ後に通った記憶がある。そのとき、病院の外壁やフェンスに行方不明の人々の写真がたくさん貼り付けてあった。私はできるだけ多くの写真を見ようとしていたと思う。見なければいけないと思った。

人間には心やすまる時代は到来してくれないのだろうか。でも、困難を自らの意思で明るいものに変えていけるのも人間なのかなぁ、と思う。

コイン・トス。確率は50%だ。
何かのタイミングであの日の生死が逆転した人も多いだろうと思う。
思えば、人生そのものがそんなはかないものなのかも知れない。

私にも「何かが違っていたら、自分もあの朝、あのビルにいたかもしれない」という友達がいる。

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