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2006/03/26

Brokeback Mountain

ふと思い立って、レイトショーで「ブロークバック・マウンテン」を見た。難しい同性愛をテーマにしていながら、各賞を総なめしているだけあって、見終えたあと深い余韻を残す。大自然を背景にしているからであろうか、二人の相手を想う気持ちがあまりにも必然であるように思えたし、時代背景も絡まってむしろ崇高にさえ映った。

公式サイト

http://www.wisepolicy.com/brokebackmountain/top.html

2006/03/23

short story (1)

 タクシーは、荒んだ景色にしか映らない地区を走りぬけ、次第にマンハッタンに近づいていく。マンハッタン島はそこだけが華やかで、クイーンズやブロンクス、スタテン島、ブルックリン地区は“ニューヨーク市”であって“ニューヨーク”ではない。空港から伸びるハイウエイ沿いの家々は、色とりどりのマッチ箱のようで、マンハッタンの古くても趣のあるアパートメントに比べると、安っぽくて無機質で悲しく映る。

 僕はその年のクリスマス、ようやくまとまった休暇を取ることができ、念のため、しかし休暇が取れますようにと祈るような思いで予約しておいた航空券をにぎりしめニューヨークへと向かった。5年ぶりに。そう、5年前の暮れ、僕はニューヨークで律子に別れを告げ帰国したのだった。その頃はお互いに日系企業の支社で働いていたから、それなりの収入もステイタスもあった。「美術館に出かけるから、その間に出ていって。」それが僕が聞いた律子の最後のことば。それ以来、お互い一切の連絡を絶っている。

 僕を乗せたタクシーは今にも凍りそうなイーストリバーを渡り、夕刻のミッドタウンへとすべり込む。何のあてもなくやってきた旅行者にとっては、クリスマスのイルミネーションが、少しだけ、少しだけであるが優しい。ニューヨークは初めてか?とお決まりの質問をする運転手に、「ええ、そうです。」とだけ答えておいて、ぼんやりと窓の外に目をやっていた。タクシーの運転手を相手に、かつてこの街で過ごしたときに抱いた思いの一端でさえ語る気にはなれなかった。彼女はまだこの街にいるのだろうか。いつか彼女と何気なく交わした会話のなかのある約束を僕は今でも忘れることができないでいる。

つづく。

2006/03/01

ニューヨーク遥かに

常盤新平 著

集英社

大原という初老の主人公が、間宮というやはり初老の友人に会いにニューヨークへ行く。間宮は80年代にマンハッタンで寿司屋を開店し成功をおさめた人物であるが、最近、突然経営から身を引く。大原はその理由を求めて、自らも愛着のあるニューヨークで一週間を間宮と過ごす、という内容。フィクションとあるが、私は、大原は著者である常盤新平自身、そして間宮も実在の人物がモデルになっていると思う。それは、最近までに出版されてきた著者のエッセイなどを読んでいれば、誰もが想像ついてしまう。その点が、常盤新平は、小説家としては下手なのかもしれない。でも、不思議なことに、この小説にのめりこんだ。読み終えて、なぜかと考えると、著者のニューヨークへの思いが、自分のそれにとても近いことを感じるからだと思う。以前は本や映画のなかだけのNYが、旅行がたやすくできる時代になり、実際訪れてみると、やはり想像どおり魅力的で。気に入った部分はとことん好きで、何度も足を運んだり。それは、たいしたことないハンバーガー屋だったり、古本屋だったりで、高級なレストランや有名ブランドショップではない。ただ街を歩いているだけで感慨深くなる。そして、お気に入りの場所を歩きながら、過去を振り返ったり、これからのことを考えたりとニューヨークを見物しながら自分自身を見ている。そんなところを自分と重ね合わせて読んでいた。

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