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2006/12/17

ニューヨークでがんと生きる

千葉敦子 著

文春文庫

新聞記者を経て、フリーランスのジャーナリストとして活躍した筆者が、自らのがん闘病をレポートした内容。乳がんの再々発の不安を抱えながら、ニューヨークに移り住むことを選択し、そこでアメリカでの最先端のがん治療を受ける。日米の当時の(80年代)医療方針の違いを克明にレポートしている。現在は日本も、インフォームドコンセントが進んできているが、医療については、医師が絶対的であり患者は訳もわからず言いなりになっているようなところが散見されると私も感じる。著者ががん治療を受けた80年代はそれが顕著であった。その治療がどんな副作用をもたらすかなど、患者には充分な説明がなされていなかったという。アメリカではどんなことでもいいから医師や看護師に質問しなさい、とされていたという。それが患者の役割だと。また、その病気に対する情報量の面でも、日米では格段の差があったとも書かれている。80年代のアメリカではすでにオンラインや論文や書籍などあらゆる文献から、患者自身が治療についての情報を得ることができたそうだ。いまはきっと、その差は縮まっていると思う。もし、千葉さんがいまも生きていたら、インターネットを駆使して、便利な世の中になったと喜ぶに違いない。

千葉さんが亡くなる直前の87年2月に、千葉さんの居るニューヨークに私は確かにいた。あのニューヨークを彼女はこう記している。

「毎朝起きたときの“ウェルビーイング”(幸福感、満ち足りた気分)にわれながら驚く。ひどく気分の悪い朝でさえ“何か意外さが待ち受けている一日”への期待感に胸をふくらませて目を覚ます。これは間違いなくニューヨークのせいだ。」

もし自分が病気により死を意識せざるを得ない事態に陥ったとしたら、どんな行動をとることができるだろう、と深く考えさせられた。ただただ途方に暮れるようなことだけはしたくない。そのためには、強い精神力と豊かな知識も必要とされるだろう。苦しさと闘いながらも、何か意義のあることを残すことができるように。または、自分が幸福と感じられる場所に行く行動力を湧き立たせられるように。

アメリカの医療も、富裕層と貧困層とでは、受けられる医療内容に大きな差があり、社会問題にもなっているという。しかし、この千葉さんのレポートによって、自分でも病気についての勉強をし、疑問点は医師に確認するという前向きさの必要性、治療の辛さを忘れられるほど熱中できること(仕事だっていい)を持つことの重要性などを学んだ。

本書にヴィレッジにあるNY公立図書館の分館であるジェファーソンマーケット図書館のことが記載されていた。千葉さんお気に入りの場所として。私も訪れたことがあり、なんとなく親近感を覚える。

webで調べたら、ニューヨークタイムズ紙に千葉さんが87年7月に逝去した際の記事があった。がんと闘った日本のジャーナリストと。

ニューヨークには千葉敦子という人の生き様が息づいているのだ。

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