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2007/05/28

for them who couldn't say the word "love"

「愛」という言葉を口にできなかった二人のために

沢木耕太郎 著

幻冬社

知人(後輩?)より薦められて読んだ。沢木耕太郎はノンフィクションを中心にたくさん本を書いているが、私は「深夜特急」シリーズしか読んだことはなかった。今回の本は、映画に関する32編のエッセイで、薦められたから言うわけではないが、とても気に入った。その理由は、内容が映画評に留まっていないからだと思う。沢木という人が、映画そのものを味わえる人のように思えた。私はその映画の監督が誰だとか、そういうことにはあまりこだわらないほうだ。そして、作品のなかにたとえあり得ない(考えられない)ことが描かれているとしても、それを帳消しにする何かがあれば、そんなものは吹っ飛ばせる。(気にしない。)このエッセイを読んでみたら、そんな部分が共通すると思えた。映画の見方とでも言おうか。

現時点での私の生涯の5本に入る「ライフ・イズ・ビューティフル」についても書かれていたことも気に入った。この映画の中に主人公のグイドが強制収容所で、以前ナゾナゾ解きで親しくなったドイツ人医師と再会する。グイドは収容所からの脱出の手助けをしてくれるのではないかと微かな望みを抱くのだが、ユダヤ人にとって地獄の収容所内にあっても、このドイツ人医師には、グイドとのつながりはナゾナゾ解き相手以上のものはない。このシーンを、沢木はエッセイで、人間には、自分と無縁の不幸に対してはどこまでも鈍感になれる本質がある、と述べている。この映画のその部分に着目して言及しているところなど、ピタッときた。

そのほかにも、「ブロークバック・マウンテン」や「ブラス!」など、なるほどとうなずける見方をしている。そして、全ての作品について、これから見る人のために、種明かしはしていないところもいい。

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