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2012/12/16

ヘルシンキで雨に降られて

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今年の夏にヘルシンキに行ったときのある場面について。

一人旅だけれど、一度くらいは夕食を評判のレストランでとろうと、ガイドブックで選んだレストランへ向かった。ホテルからそう遠くないので、徒歩で向かった。でも、地図を見ながらいくつかの角を曲がっていく途中から冷たい雨が降り出してきて、ホテルに傘を置いてきてしまったわたしは、バッグに入れておいた夏用のストールを被って急いだ。

ほとんど迷わずたどり着いたそのレストランは、小さな緑地帯が窓外に見える想像よりも小さな店だった。雨に濡れて体が冷えてしまったので、温かいスープはぜったいに頼もうと思いながら入った。ところが!!!「予約を入れてありますか?」と。予約がないと入れないと言われてしまったのであった。もう、ガーンである。ヘルシンキの庶民派レストランとあったので、予約などしなくても入れると思っていたので。だいいち、予約しないと入れないようなレストランには、わたしは基本的には一人旅では入らない(入れない)。

すっかり気落ちしたところに、外は雨。傘もなし。緑地帯前のバス停で雨宿りしながら途方に暮れていた。バス停ではわたしのほかに中学生くらいの年齢の男の子がバスを待っていたのを覚えている。彼はスポーツバッグを携えていたから、クラブ活動を終えて帰宅するところかな、と思った。バスはなかなか来なかった。別に乗るわけではなかったが、バスが来たら乗ってみようかとも思った。

冷静に周囲を見ると、緑地帯を囲むようにアパートメントが立ち並んでいた。日は落ちてきて夜がやってきていたけれど、窓の明かりはまだあまりついてはいなかった。日の長い夏だったから、時間は夕食の時間だったけれど、まだ夕闇に包まれてはいなかったからだと思う。

雨は激しさを増していた。ふと見ると、バス停の右前方のアパートから、誰かがこちらを見ているのに気付いた。4階あたりのベランダから。しかもかなり長い間こちらを見ていたと思う。

なぜかわからないが、そのベランダに雨のバス停を見下ろす人がいたその場面からあとの、その夜のことは記憶にない。

ヘルシンキの小さな緑地帯。バス停。ティーンエイジャー。日本人。雨。それを見下ろす人。もし、レストランにすんなり入れたとする。その場合でもきっと印象に残る場面があっただろう。でも、8月の終わりのその夜は、期待していた夕食にありつけず、雨に降られて途方に暮れた(大げさかな)。そして、そんな事情を知らない人と居合わせた。ただそれだけのことなのに、やけに刻まれている。

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