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2013/02/09

点子ちゃんとアントン

よく拝見するブログに、エーリッヒ・ケストナーの『点子ちゃんとアントン』についての記事があり、確か以前、映画では見たことがあるが本はまだ読んだことがないので、わたしも早速図書館で借りて読んでみることにした。

Dsc_0500

↑挿絵は司修です。これがなかなか素晴らしいのです。

この物語が発表されたのは1931年。舞台はベルリン。第二次世界大戦前(ナチス台頭前)であり、ベルリンが東西に分断されるのはさらにずっと先のことだ。だから、暗い影を落とす前のベルリンを想像しながら読んだ。パリやウィーンといったほかの都市と同列にある、「特異性を持たないころ」のベルリンの情景を思い浮かべながら。

795pxberlin Wikipediaより

舞台はベルリンの中心部フリードリヒ通り駅周辺のようだ。Wikipediaに1900年当時の駅の写真があった。この時代にしてこの駅舎とは・・・周囲の建物も重厚だ。物語には点子ちゃんのお父さんがリムジンを所有していたり、ウンターデンリンデン歌劇場に行く、など上流階級の様子も垣間見られる。一方、アントン母子のようにその日の暮らしにも事欠く市民もいて、作者は物語を通じて貧富の差という社会問題を読者(子どもたち)に考えさせている。

図書館にあったのは、昭和44年に刊行された高橋健二訳で、ことばの言い回しにやや固さや古さを感じるが、20世紀初頭という時代の物語なので、かえってしっくりきたと思う。

この物語の魅力は、なんといっても点子ちゃんのアントンに対する思いやりと、彼女の独創性に尽きる。決して押し売りの優しさではなく、子どもながらの素直な優しさが読む者にせまる。そして彼女の勇敢さにも拍手喝采なのである。(点子ちゃんがアントンの担任の先生に会いに行く場面では、不覚にも読んでいた病院の待合室で泣いてしまいました)

とにかく、今更ながら読んだこの児童文学、多くの大人に読んでもらいたい一冊です。

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