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2013/08/31

世界を回せ

『世界を回せ』 上下

コラム・マッキャン著

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最初は重苦しい展開で息がつまりそうになったのだが、なんとか最後まで読むことたできた。最近よく見かける手法で書かれている。それは、主人公が複数いて、それぞれの主人公が交錯するという手法。巧みに交錯していると思った。ついさっきまで主人公だった人物が、違う場面ではただの脇役で感情までは伝わってこない。でもその人物のことをよくわかっているので深みが増す、というような。すごく巧みだ。

ニューヨークが主な舞台というのも、手に取った理由のひとつで、世界貿易センタービルが完成した頃(1970年代)の時代設定。アメリカは、ベトナム戦争の泥沼化、ドラッグの蔓延、経済の減速など、暗さただよう時代のように思える。その時代背景で、苦しみを抱えている何人かの人たちを描いている。そしてあの貿易センターの2つのビルの屋上にワイヤーを渡して綱渡りした大道芸人もモチーフに加えている。モチーフの大半がフィクションであるのに対し、綱渡りだけは実際にあった事である。いまは跡形もないビルの間を、一人の男が空を渡ったという揺るぎない事実が(伝説的な事実が)編み込まれていることで、物語がリアルに感じられたと思う。

個人的には、ベトナム戦争で息子を失った境遇の違う母親同士のふれあいがよかった。もう元には戻らない喪失感ややり場のない悲しみの対処の方法などどこにもない。心に穴が開いたまま日常をやり過ごさなければならない。唯一の救いは「理解」なのかもしれない。そして同じような体験をした者同士ほどの分かりあえる相手はいないのであろう。時に慰めの言葉は、それが真の思いやりから生じたものであっても残酷に立ち入ってくることもある。ただ、同じ悲しみを背負った人の発する言葉や行為はすべてが許されて沁み入るのかもしれない。

また、WTCを綱渡りしたフランス人について、もっと知りたいと思った。本も出ているし映画化もされていたようだ。一番の関心事は、どうやってWTC間にワイヤーを渡したかということ。あの高さを命綱なしで綱渡りするなんて凄すぎる。目撃した人はどう思っただろう。目撃したかったなぁ。

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