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2014/05/31

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中学のときの恩師S先生が亡くなったという連絡が同級生からあった。


数年前に学年の同窓会があり、わたしは仕事で出られなかったのだが、同級生がS先生と写った写真をメールしてくれて、お変わりない様子だったのに。

わたしは中学から高校にかけて部活動で剣道をやっていた。中学に入ると何か部活に入らなければならず、理由はいまではよくわからないのだが、剣道部に入部した。いま思い返すとそのときの剣道部の顧問の先生は名目上の顧問であって、剣道の指導はされていなかったので、そのような部に入ったことはかなり無謀だった。そんな環境で、同じく中学に入って始めたばかりの先輩による指導で1年が過ぎていったのだった。

そして2年生のとき。S先生がわたしのいた中学に赴任され担任になったと同時に、なんと、剣道部の顧問に就かれたのだ。そのときS先生は剣道五段だとうかがった。それからの部活は一変した。S先生の指導はすごく厳しいもので、ときには弱音を吐きそうになるほどだったのだ。特にその日の最後に行う「掛かり稽古」は地獄の苦しみで、ひとりひとり順番にS先生にかかっていくというもの。先生はその稽古で手加減しなかった。(とそのときは思っていたけれど、本当はすごく力を抜いてくださっていたんだろう)どんなにこちらが力いっぱい向かっていっても打ちのめされてしまい、先生はびくともしなかった。その上、脳天に一発先生の竹刀が打ちつけると、頭からつま先まで稲妻が走るような衝撃があり(大げさに思われるかもしれないけれど、本当なんです)くらくらした。全員の相手が終わると先生はもう一回やりたい生徒がいればとことん稽古をつけてくれた。わたしは納得がいかないとよくお願いしていたのだが、2回目は先生も少し手加減してくださったのではないだろうか…打ちやすいようにご自分から面を差し出してくれ、最後はこちらが気持ちよく終われるように配慮してくださっていた。

S先生のおかげでわたしたちはみるみる力をつけていった。やはり指導者がいるのといないのとではぜんぜん違うのだ。試合にも勝てるようになって、剣道の面白さや奥深さを知ったことは大きい。当時わたしは剣道が楽しくて楽しくて仕方ないほどだった。

もしS先生に出会わなかったら恐らくわたしは高校では剣道を続けなかっただろう。高校では二段まで取り、以後履歴書の特技欄に「剣道二段」と書けるようになり、唯一の特技として燦然と(?)輝いている。それから何より、もうこれ以上無理だと思うほど苦しくても、余力をふりしぼれば物事に立ち向かうことができることをS先生から教えていただいた。

心より先生のご冥福をお祈りします。

2014/05/25

チョコレートドーナツ(Any day now)

映画「チョコレートドーナツ」を見た。

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いまでは同性愛も合法化され、市民権を得ているけれど、このストーリーは70年代。まだ偏見が根強かった時代にゲイカップルが親に見捨てられたダウン症の少年を家族に迎え入れるために行動を起こす物語。

ドラマ「ブラザーズ&シスターズ」でも養子を迎え入れるゲイカップルが出てくるのだが(これは2000年代のドラマ)、もちろんカミングアウトしていて、カップルの一人が法律家でそれなりのステイタスもあるので、手続きを踏んで養子を迎え入れることができている。そこにはゲイだからどうとか、という要素が一切ない。

チョコレートドーナツは、アメリカは(世界は)この30年間でこれだけ変わったのだということを理解させてくれる映画だった。もちろん、一気に起こった変化ではないはずだ。様々な戦いや活動が積み重なり、お互いを認め合う社会になってきたということなんだと思う。エンディングはいたたまれない気持ちになるが、少年の親になろうとした二人の本物の愛情が優しく折り重なって少年の魂にきっと安らぎをもたらしたと思いたい。


アラン・カミングが光っていた。

チョコレートドーナツ公式サイト

2014/05/18

ブルー・ジャスミン (Blue Jasmine)

ウディ・アレンの新作「ブルー・ジャスミン」を見た。

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映画の舞台はニューヨークとサンフランシスコ。個人的にはウディ・アレンにはアメリカで、特にニューヨークで撮ってもらいたいと願っていたので、やっと帰ってきてくれたという感じだ。前回見た(DVDで)「ローマでアモーレ」はどうしちゃったんだろう?と思うほどつまらなかったから、今回どうなんだろう・・・と思いながら、でもケイト・ブランシェットがオスカーをはじめ数々の賞を受賞しているので期待は大きかったと思う。

そして、あのウディ・アレン独特の要素がしっかり映画の主軸にあったことで、この映画監督の健在ぶりが確認できたのであった。

わたしなりに考える独特の要素とは、神経症の主人公(パニックになると息ができなくなる)、長いセリフ、ちょっと変わり者だけど大切なことは何かを知っている脇役(ブルー・ジャスミンでは主人公の妹)、人と人との偶然の出会いによるストーリーの変化、舞台になっている都市の街角の風景、そしてWアレン好みの音楽。

ただ、いままでとちょっと違ったのは、エンディングである。

Wアレン作品はセレブが主人公でも、そうでない場合でも、主人公は人生に絶望したり落胆したりしながら(それがコメディタッチで描かれている)、最終的には"take it easy"となるはずだが、ブルー・ジャスミンは深刻さを残したまま終わる。その深刻さが見る人によっては笑いなのかもしれないが、わたしには怖さだった。主人公がどんどん壊れていき、立ち直れない。

また、これまでの作品と違うのはアメリカの格差社会をテーマにしたところだと思う。比較的インテリ層の社会を描いた作品が多かったから。

ケイト・ブランシェットの演技は迫真に迫るものだったことは間違いない。

ブルー・ジャスミン公式サイト

2014/05/04

101年目のロバート・キャパ 展

先日、東京都写真美術館で開催中の「101年目のロバート・キャパ 誰もがボブに憧れた」展に行ってきた。

キャパはテレビ番組や雑誌などでも採り上げられることが多いので、知ったつもりになっていたが、考えてみるとこれだけ多くの写真を一度に見たのは初めてかもしれない。

戦場カメラマンとして紹介されることが多いと思うが、今回は視点を少し変えて展示写真を選定していて、この展覧会では、キャパと交流のあった著名人や戦場での兵士の休息場面、緊迫した状況下でのちょっとしたユーモアなどが表れた写真を見ることができる。

キャパが現在のベトナムで地雷によりその一生を終えたことは知っていたものの、その直前に日本に初めて訪れていたことは知らなかった。初来日で撮影された当時の日本の人々の様子もこの写真展で見ることができる。

また、キャパが最期に愛用していたカメラや、そのカメラで最後に撮影されたショットのネガも展示されていて、このカメラを使っていたのだと思うとゾクゾクッときてしまう。

キャパが戦場に赴いてその現実を写真におさめることを生業にしていたとはいえ、まさかノルマンディ上陸作戦に(しかも第一陣)に同行したことはしっかり認識していなかったので(このことは有名な事実にもかかわらず!)、海岸で連合軍兵士が海水をかき分けて上陸する様子を撮った写真にはしばらく見入ってしまった。

最近、沢木耕太郎著『一号線を北上せよ ヴェトナム街道編』を読んだばかりなのだが、著者がヴェトナムをバスで移動するなかで、キャパがナムデンで撮った傑作と言われる「夫を亡くして墓地で泣き崩れる女性」のその場所を見るためにナムデンを訪れたという記述がある。結局その場所にはたどりつけなかったようだが・・・ その写真も今回の展覧会で見ることができる。

そして、キャパは日本滞在中にLIFE誌から急遽ヴェトナムへ取材に行くよう命を受け向かったという。LIFE誌といえば、つい最近見た映画『LIFE!』のモデルとなった写真雑誌である。キャパが撮影した写真が掲載されている号も展示されている。休刊になってしまった著名雑誌だけに、これも見る価値がある。映画で重要な人物となっているカメラマン(ショーン)とキャパは、違うタイプであるが、LIFE誌は才能と感性ある多くのカメラマンにより支えられていたのだろうなぁとしみじみ思った。

ナムデンの墓地の写真とLIFE。そんな偶然が重なり、とても不思議な感じになる。

キャパは身軽に暮らしていたとか。ほとんどがホテル住まいだったというのも、わたしのなかのキャパ像にぴったりくる。そして、あの有名なポートレイト(下の写真)のキャパはとてもハンサムで、人懐こそうである。きっと多くの人を引き付けたことだろうと認めざるを得ない風貌なのである。

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「101年目のロバート・キャパ 誰もがボブに憧れた」公式サイト

東京都写真美術館は恵比寿ガーデンプレイスにあるが、久しぶりに訪れて、やっぱりここは落ち着くなぁと思った。

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